マイアミ・マーリンズは、メジャーリーグベースボール(MLB)のナショナル・リーグ東地区に所属するプロ野球チームです。
1993年にフロリダ・マーリンズとして創設され、2012年に現在の名称に変更されました。
短い歴史ながら、1997年と2003年にワールドシリーズを制覇し、拡張チームとして異例の成功を収めています。
しかし、優勝後の主力選手の放出や低予算運営による低迷期も多く、波乱に満ちた軌跡を辿ってきました。
この記事では、マーリンズの歴史を振り返り、チームを彩った主な選手たちを紹介します。
創設と初期:苦難のスタート
マーリンズは1993年、コロラド・ロッキーズと共にMLBの拡張チームとして誕生しました。
オーナーのウェイン・ヒュイゼンガは、マイアミのサッカー場(ジョー・ロビー・スタジアム)を本拠地とし、初代監督にレネ・ラシェマンを迎えました。
初年度は64勝98敗と苦戦し、以降4年間も負け越しが続きました。
それでも、若手選手の育成と積極的な補強で徐々に力をつけます。
1996年にはケビン・ブラウンやアル・ライターらベテランを加え、80勝を挙げて飛躍の兆しを見せました。
1997年:初のワールドシリーズ制覇
1997年、マーリンズは創設5年目で奇跡を起こします。
監督ジム・レイランドのもと、ゲイリー・シェフィールド(外野手)、リバン・ヘルナンデス(投手)、ルイス・カスティーヨ(二塁手)、チャールズ・ジョンソン(捕手)らが活躍。
92勝70敗でワイルドカードを獲得し、プレーオフではサンフランシスコ・ジャイアンツとアトランタ・ブレーブスを破りました。
ワールドシリーズではクリーブランド・インディアンスと対戦。
第7戦の延長11回裏、エドガー・レンテリアのサヨナラ打で4対3の劇的勝利を収め、初優勝を飾りました。
この快挙は、MLB史上最速でのワールドシリーズ制覇として記録されています。
しかし、優勝の喜びも束の間、経営難を理由に主力選手が次々とトレードされ、1998年には54勝108敗と急落。
ファンの失望を招きました。
2003年:再びの頂点
2000年代初頭、マーリンズは再建に着手します。
2003年、72歳の名将ジャック・マキーンが監督に就任。
若手投手のジョシュ・ベケット、ドントレル・ウィリス、A.J.バーネット、カル・パバーノらが台頭し、ベテランのイバン・ロドリゲス(捕手)やマイク・ローウェル(三塁手)、ジェフ・コナイン(外野手)がチームを支えました。
91勝71敗で再びワイルドカードを獲得し、プレーオフではジャイアンツ、カブスを撃破。
特にNLCS第6戦のカブス戦では、「バートマン事件」で知られる逆転劇を制しました。
ワールドシリーズでは強豪ニューヨーク・ヤンキースを4勝2敗で下し、2度目の優勝を達成。
ベケットの完封勝利は、シリーズのハイライトとして語り継がれています。
だが、2004年も主力放出が続き、チームは再び低迷。
ファンは「優勝と解体のサイクル」に苛立ちを覚えました。
2012年:新球場と新たな挑戦
2012年、マーリンズは新球場ローンデポ・パーク(当時はマーリンズ・パーク)に移転し、チーム名をマイアミ・マーリンズに変更しました。
総額5億ドルの豪華な球場と、オジー・ギーエン新監督の下、ホセ・レイエスやマーク・バーリーら大型補強で注目を集めます。
しかし、期待に反して69勝93敗に終わり、シーズン後に再び選手を放出。
ファン離れが進み、観客動員数はリーグ最下位近くに落ち込みました。
2020年とその後:若手の躍進と再建
2020年、コロナ禍で短縮されたシーズンながら、マーリンズは31勝29敗でプレーオフ進出。
ワイルドカードシリーズでカブスを破りましたが、NLDSでブレーブスに敗れました。
この年、キム・ングがGMに就任し、MLB初の女性かつアジア系GMとして歴史を刻みます。
2023年には84勝78敗で再びプレーオフ進出を果たし、ングは女性GMとして初のプレーオフ進出チームを率いた人物となりました。
しかし、2024年は62勝100敗と低迷し、課題が浮き彫りとなっています。
2025年シーズン開幕時点で、マーリンズは若手中心のロースターで再建を進めています。
4月6日にはマット・マービスが2本塁打を放ち、ブレーブスを4対0で下すなど、明るい兆しも見せています。
主な所属選手:マーリンズのスターたち
マーリンズの歴史を語る上で欠かせない選手たちを紹介します。
ジャンカルロ・スタントン(外野手、2010-2017)
マーリンズの顔として君臨したパワーヒッター。
2017年に59本塁打、132打点でナ・リーグMVPを獲得。
通算267本塁打は球団記録です。
2016年のホームランダービー優勝や、フェルナンデス急逝後のチーム支えも印象的。
2017年にヤンキースへトレードされました。
ミゲル・カブレラ(外野手/三塁手、2003-2007)
2003年、20歳でワールドシリーズ制覇に貢献。
通算147本塁打、523打点。
ゲーム4の決勝本塁打は伝説的です。
2007年にタイガースへ移籍後、2度のMVPを獲得するレジェンドとなりました。
ジョシュ・ベケット(投手、2001-2005)
2003年ワールドシリーズMVP。
通算41勝34敗、防御率3.46。
ヤンキース戦の完封は球団史に残る名演です。2005年にレッドソックスへトレード。
ホセ・フェルナンデス(投手、2013-2016)
天才右腕として愛された選手。
2013年に新人王、2016年に16勝8敗、防御率2.86を記録。
通算38勝17敗、589奪三振。2016年のボート事故による急逝は、野球界に大きな衝撃を与えました。
ハンリー・ラミレス(遊撃手、2006-2012)
2006年新人王、2009年に首位打者(.342)。通算148本塁打、281盗塁。
スピードとパワーを兼ね備えたスターでした。
サンディ・アルカンタラ(投手、2017-)
2022年に防御率2.28、228.2回を投げ、ナ・リーグサイ・ヤング賞を受賞。
通算41勝55敗、779奪三振。2023年のトミー・ジョン手術から復帰を目指しています。
ルイス・カスティーヨ(二塁手、1996-2005)
通算1273安打、281盗塁は球団記録。
3度のゴールドグラブ賞、3度のオールスター選出。1997年と2003年の優勝に貢献しました。
ゲイリー・シェフィールド(外野手、1993-1998)
1997年優勝の立役者。
通算122本塁打、380打点。
1996年には打率.314、42本塁打でオールスターに選ばれました。
クリスチャン・イエリッチ(外野手、2013-2017)
通算59本塁打、293打点。2014年にゴールドグラブ賞、2016年にシルバースラッガー賞。
2018年にブルワーズ移籍後、MVPを獲得しました。
ドントレル・ウィリス(投手、2003-2007)
2003年新人王、2005年に22勝10敗で最多勝。
通算68勝54敗、757奪三振。独特の投球フォームでファンを魅了しました。
今後の展望
マーリンズは、拡張チームながら2度のワールドシリーズ制覇という偉業を成し遂げました。
しかし、通算勝率.459、プレーオフ進出4回はMLB最低で、安定した強さを築くことが課題です。
ローンデポ・パークの観客動員も低迷し、地域での人気回復が急務となっています。
2025年は、アルカンタラの復帰や若手選手の成長に期待がかかります。
オットー・ロペスやデーン・マイヤースらが早速活躍を見せており、再びの飛躍が期待されます。
マーリンズの歴史は、栄光と挫折の繰り返しです。
スタントンやフェルナンデスのようなスターが生まれ、ファンを熱狂させた一方、経営方針への批判も根強いです。
それでも、彼らの情熱と才能は、マイアミの野球史に深く刻まれています。
今後、若手育成と戦略的な補強で、3度目のワールドシリーズを目指してほしいです。
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