スリークォーターから最速160km/hのストレートを放ち、フォークとスライダーを操る右腕・大勢(たいせい)。
本名・翁田大勢(おうた たいせい)、1999年6月29日、兵庫県多可郡八千代町(現・多可町)生まれの26歳は、ルーキーイヤーから読売ジャイアンツのクローザーとして君臨してきた現代プロ野球屈指の守護神です。
デビューシーズンに新人最多タイの37セーブを記録し新人王を獲得、WBC2023・2026と2度にわたって侍ジャパンのマウンドを任された存在感は、球団の枠を超えて日本球界の至宝と呼ぶにふさわしいものがあります。
競技との出会いから頭角を現すまで
小学1年の時に軟式の「八千代少年野球クラブ」で野球を始め、中学校ではボーイズリーグの氷上ボーイズでプレーした大勢。
地元・兵庫の土壌でコツコツと力を磨いた少年は、やがて甲子園を目指す夢へと歩み始めます。
兵庫県立西脇工業高等学校では1年春からベンチ入りを果たし、早くも将来性の高さを示しました。
ただ、甲子園への扉は最後まで開かれることなく高校時代は幕を閉じます。
卒業後はプロ志望届を提出せず、関西国際大学への進学を選びました。
しかし大学では新型コロナウイルスによるリーグ戦中止や右肘の疲労骨折にあえぐなど、順風満帆とはほど遠い日々が続きます。
それでも逆境に屈しませんでした。
コロナ禍でリーグ戦が失われた時期も練習を重ね、肘の故障を乗り越えて大学4年時には球界屈指のクローザー候補へと成長。
2021年10月11日のドラフト会議では、4球団競合となった隅田知一郎の抽選を外した読売ジャイアンツから1位指名を受けたのです。
入団発表の場で監督の原辰徳から「大勢」という名前を登録名にするよう提案されたエピソードも印象的です。
原監督は「素晴らしい名前なので登録名にしてはどうかと提案した。必ず伸びてくれる選手になる」と語り、大勢自身も「名前のように大勢のファンを魅了する選手になりたい」と意気込みを語りました。
背番号15をまとったその言葉は、後に見事に現実となります。
プロ入り後の軌跡とターニングポイント
ルーキーイヤーの2022年3月、中日との開幕戦でプロ初登板・プロ初セーブをマークし、華々しいデビューを飾りました。
開幕からクローザーの大役を任された新人とは思えぬ胆力で、57試合に登板し防御率2.05、リーグ3位および歴代新人最多タイの37セーブを挙げる活躍を見せました。
新人王の投票では有効投票数299のうち209票を獲得し圧勝。
受賞スピーチで「来年は湯浅くんとセーブ王争いをして、もっとファンをワクワクさせたい」と宣言した姿には、すでに王者の風格が漂っていました。
しかし、2年目以降は試練の連続となります。
2023年シーズンは開幕3試合目となる4月2日の対中日戦でシーズン初登板・初セーブを記録しましたが、6月24日に右上肢のコンディション不良で登録を抹消されました。
2か月半後の9月16日に一軍へ再昇格するも精彩を欠き、最終的に27試合で14セーブ・防御率4.50でシーズンを終えるという、苦しい時間でした。
もっとも、2023年の前半には侍ジャパンの一員としてWBCを戦い、準決勝の対メキシコ戦で1点ビハインドの9回表に登板し、無失点に抑えました。
直後の9回裏に日本代表がサヨナラ勝ちを収めたため、勝ち投手となったという国際舞台での輝かしい記憶も残っています。
2024年は春季キャンプ中に右太ももを痛めるアクシデントに見舞われ、右肩の違和感による約2カ月間の離脱があったものの29セーブを記録。
防御率0.88と安定感のある投球を続け、球団4年ぶりのリーグ優勝に貢献しました。
故障を抱えながらも、守護神の責務を果たしきった意地の一年でした。
2025年は54試合に登板して防御率2.42を記録し、ブルペンの柱として機能。
2026年のWBCにも2大会連続で選出され、日本代表のクローザーとして世界の舞台でもその実力を証明しています。
プレースタイルの特徴と主な実績
大勢の最大の武器は、その圧倒的な球速です。
スリークォーターから、シュート回転しながら伸びていく最速160km/hのストレートが最大の武器で、変化球はフォーク、スライダーを持ち球にしています。
スリークォーターから放たれる160キロというのは打者にとって極めて対応が難しく、打席でその「見えない角度」から球が来る感覚は対戦した打者たちを苦しめてきました。
武器はスピードだけではありません。
フォークの精度が高く、追い込んでからの空振り率も高水準を維持。
2024年は右肩痛で2カ月近く抹消されていましたが、6月30日の一軍復帰後はクローザーとして活躍し最速160キロをマークするなど、離脱明けでも球威を落とさない身体的なポテンシャルも大きな強みです。
また、精神面の強さも特筆に値します。
開幕からクローザーの大役を任され「本当にプレッシャーのあるポジションで、毎日緊張していました」と語りながらも、そのプレッシャーを力に変えてきたメンタリティ。
WBC決勝の7回という大一番でも「すごい重圧、プレッシャーは感じた。本当に良い経験をさせていただいた」と冷静に振り返る姿は、真のクローザーが持つ胆力そのものです。
ユーモアのある人間性も人気の源です。
ルーキーイヤーには「#大勢はガチ」というハッシュタグがTwitter上で生まれ、読売ジャイアンツの公式グッズも作られるほどファンに愛されました。
WBC2023ではチームに浸透した「ペッパーミル・パフォーマンス」ではなく、塩を振りかけるようなパフォーマンスをベンチで行い、硬派なクローザーの意外な一面を見せてくれています。
主な実績としては、セ・リーグ新人王(2022年)、新人最多タイ37セーブ、WBC2023日本代表(世界一)、WBC2026日本代表選出、通算81セーブ(2025年終了時点)などが挙げられます。
まとめ
地元・兵庫の少年が、プロ志望届を出さずに大学へ進学し、コロナ禍と肘の故障を乗り越えてつかんだプロの座。
入団1年目から守護神に抜擢されると、圧巻の成績で新人王を獲得し、WBCの決勝でも大舞台を任されました。
その後も故障との闘いが続きましたが、そのたびに復活を遂げてマウンドへ戻ってくる姿は、どこかこの投手の人生そのものを映し出しているようです。
160キロのストレートが聖域・9回に閃光を放つとき、東京ドームのファンは確信します。
今日もゲームセットは、あの右腕が決める、と。
巨人の守護神として、そして日本を代表するクローザーとして、大勢のさらなる積み重ねに期待は尽きません。待は尽きません。





















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