ミルウォーキー・ブリュワーズは、アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーを本拠地とするメジャーリーグベースボール(MLB)のプロ野球チームです。
ナショナルリーグ中地区に所属し、ビール造りが盛んな街の名にふさわしい「ブリュワーズ(醸造家)」という愛称で親しまれています。
このチームの歴史は、挫折と栄光の連続で、熱心なファンを魅了してきました。
創設から現在に至るまで、リーグの変遷を経験し、数々の名選手を輩出しています。
ここでは、ブリュワーズの歴史を概観し、主な所属選手について紹介します。
創設と初期の苦闘(1969年~1970年代)
ブリュワーズのフランチャイズは、1969年にアメリカンリーグのエクスパンション球団としてシアトル・パイロッツとして誕生しました。
しかし、開幕1年で財政難に陥り、わずか1シーズンで移転を余儀なくされます。
1970年、ミルウォーキーの実業家バド・セリグが買収し、ミルウォーキーへ移り、「ミルウォーキー・ブリュワーズ」に改称しました。
この名前は、19世紀からミルウォーキーのマイナーリーグチームで使われていた伝統的なもので、地元ファンに喜ばれました。
当初はアメリカンリーグ西地区に所属していましたが、1972年に東地区へ移動します。
初期の1970年代は苦しい時期でした。
1970年の64勝98敗を皮切りに、勝率5割を下回るシーズンが続き、ファンも離れがちでした。
しかし、1978年頃からハリー・ドルトン球団社長の下で若手選手の育成が進み、チームは徐々に強さを増します。
ロビン・ヨーントやポール・モリターといった未来のスターがデビューし、基盤が築かれました。
この時代、ミルウォーキー・カウンティ・スタジアムが本拠地となり、ビール文化を反映したファンサービスが人気を呼びました。
黄金時代とワールドシリーズ進出(1980年代)
1980年代はブリュワーズの黄金期です。
1981年のストライキによる前後期制導入で、後期を制し、プレーオフに初進出しますが、ニューヨーク・ヤンキースに敗れました。
翌1982年、95勝67敗で東地区優勝を果たし、リーグチャンピオンシップシリーズ(ALCS)でカリフォルニア・エンゼルスを3勝2敗で下します。
ワールドシリーズではセントルイス・カージナルスと対戦し、3勝4敗で惜敗しましたが、チーム史上初のワールドシリーズ出場として記憶に残ります。
この年、ヨーントがMVPに輝き、セーブ王のローリー・フィンガーズも活躍しました。
1983年には観客動員が200万人を突破し、人気球団となりました。
1987年は開幕13連勝を記録し、フアン・ニエベスがノーヒットノーランを達成、モリターが39試合連続安打のMLB記録を樹立します。
しかし、地区優勝には届かず、1980年代後半は中位に甘んじました。投手陣のテディ・ヒゲーラや打撃のセシル・クーパーが支えましたが、安定した強さには欠けました。
低迷期とリーグ移籍(1990年代)
1990年代は低迷の時代です。
1992年に90勝72敗で2位に入りましたが、プレーオフ進出はなりません。
1994年のストライキでシーズンが中断し、チームは混乱を極めました。
この頃、1994年に3地区制が導入され、中地区へ移動します。
1998年、球団拡張に伴いナショナルリーグ中地区へ移籍しました。
これはMLB史上初のリーグ間移籍で、ブリュワーズはNational Leagueを名乗るようになります。
この移籍は賛否両論を呼びましたが、2001年に新本拠地ミラー・パーク(現:アメリカン・ファミリー・フィールド)が開場し、チームイメージを一新しました。
開閉式屋根付きの美しい球場で、観客動員が増加します。
しかし、2002年には106敗の球団ワースト記録を更新し、暗黒期を象徴します。
メルビンGMの下で再建が始まり、ベン・シーツなどの若手投手が台頭しました。
復活と現代の成功(2000年代~現在)
2000年代に入り、ブリュワーズは徐々に復活します。
2008年、ワイルドカードでポストシーズン初進出を果たし、ディビジョンシリーズでフィラデルフィア・フィリーズに敗れましたが、観客300万人突破の人気を証明しました。
2011年、29年ぶりの地区優勝を達成し、ディビジョンシリーズでアリゾナ・ダイヤモンドバックスを下しますが、リーグチャンピオンシップシリーズ(NLCS)でカージナルスに敗れました。
この年、ライアン・ブラウンとプリンス・フィルダーの「ビッグ3」打線が話題になりました。
2018年は96勝で地区優勝、ディビジョンシリーズでコロラド・ロッキーズをスイープしますが、NLCSでロサンゼルス・ドジャースに7戦目で敗れました。
クリスチャン・イエリッチがナ・リーグMVPに輝き、チームの顔となりました。
2020年の短縮シーズンではワイルドカード進出、2021年と2023年に連続地区優勝を果たしますが、いずれもプレーオフで早期敗退。
2021年にはコービン・バーンズがサイ・ヤング賞を受賞しました。
2024年シーズンも中地区首位を走り、安定した戦いを続けています。
マーク・アトナシオオーナー体制下で、若手育成とベテラン補強をバランスよく進め、常勝軍団として定着しています。
通算成績は約1800勝1900敗で、ワールドシリーズ優勝経験はありませんが、ファン投票で人気の高いチームです。
主な所属選手
ブリュワーズの歴史を彩った選手は数多く、殿堂入りしたレジェンドから現代のスターまで多岐にわたります。
過去の著名選手
ロビン・ヨーント(遊撃手/外野手、1974-1993)
フランチャイズの象徴。全キャリアをブリュワーズで過ごし、3142安打、251本塁打を記録。
1982年と1989年にAL MVP受賞、殿堂入り。守備と打撃の両面で貢献し、引退番号19。
ポール・モリター(三塁手/外野手、1978-1992)
通算3319安打の殿堂入り選手。
ブリュワーズ時代に連続安打記録を樹立し、打率.315、538二塁打。
1982年のワールドシリーズで活躍、引退番号4。
ハンク・アーロン(指名打者、1975-1976)
MLB史上最多の755本塁打のレジェンド。
晩年をブリュワーズで過ごし、ナ・リーグ移籍後の活躍も。引退番号44。
ローリー・フィンガーズ(投手、1981-1985)
1981年AL MVPでセーブ王。
1982年のリーグ制覇に貢献、殿堂入り。
プリンス・フィルダー(一塁手、2005-2011)
2007年に50本塁打の球団記録。
パワーヒッターとして2011年地区優勝の原動力。
ライアン・ブラウン(外野手、2007-2020)
2007年新人王、2011年NL MVP。
打率.308、352本塁打。プレーオフでの活躍が光る。
セシル・クーパー(一塁手、1977-1987)
打率.298、201本塁打。1980年代の主力打者。
ゴーマン・トーマス(外野手、1973-1986)
1979年に45本塁打の球団記録(当時)。
パワーヒッターの代表。
現在の主力選手
クリスチャン・イエリッチ(外野手、2018-)
2018年NL MVP。
打率.280以上を維持し、2024年もオールスター。
リーダーシップを発揮。
ウィリアム・コントレラス(捕手、2022-)
オールスター常連。
打撃と守備のバランスが良く、2023年シルバースラッガー賞。
ジャクソン・チョーリ(外野手、2023-)
ルーキーイヤーから本塁打王候補。
パワーとスピードを兼備。
フレディ・ペラルタ(投手、2021-)
エース級の速球派。2024年に最多勝争い。
デビッド・ペラルタ(外野手、2024-)
ベテランとして加入、守備と中距離打撃で貢献。
これらの選手たちは、ブリュワーズの精神である「ハート・アンド・ハッスル」を体現しています。
ヨーントやモリターのような永遠のヒーローから、イエリッチのような現代のスターまで、チームの歴史を支えてきました。
最後に
ブリュワーズは、ワールドシリーズ優勝を夢見るファンに支えられ、今日もミルウォーキーの誇りです。
ビール片手にアメリカン・ファミリー・フィールドで応援する姿は、野球の醍醐味を象徴します。
将来的に、さらなる栄光が訪れることを期待します。
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